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デジタルオーディオネットワーク

  • レポート/コラム

映像設備ではHDMI 、HDBaseTなどのデジタル化が主流になっているのに対し、音響設備では依然アナログ伝送のみで構成された設備も少なくありません。しかし、音響設備においてもデジタル化、ネットワーク化の存在感が年々増しており、当社でもこうした変化に対し、操作性、安定性、施工性、将来性といった様々な面からお客様に音響設備をご提案させて頂く機会も増えてきています。本記事では、デジタルオーディオネットワーク規格で近年、注目が集まっている Dante を中心に紹介したいと思います。

デジタルオーディオの形式

一言にデジタルオーディオと言っても、その形式は様々です。2つに大別すると機器同士の入出力が1 対1 で接続されるような「ポイント トゥ ポイント」タイプと、複数の機器が繋がり通信することができる「ネットワーク」タイプがあります。このネットワークタイプのシステムを称してデジタルオーディオネットワーク(以下、オーディオネットワーク)と呼んでいます。

ネットワークタイプはさらに、Ethernet 準拠のものと、オリジナルフォーマットのものに分けることができます。中でもEthernet 準拠のものは、PC などを繋ぐ一般的なスイッチングハブを核として対応機器を接続することができます。

オーディオネットワークの特徴

物理的な配線や接続におけるメリットやデジタル通信による機能性、拡張性などがオーディオネットワークの主な特徴です。

オーディオネットワークの特徴

  • 取り回しのしやすいLAN ケーブル1本で多チャンネルを送受信できる
  • デジタル化により配線長による音質劣化や干渉ノイズの影響を受けにくい
  • ルーティングなどの機能面の接続が物理的な接続とは別に設計できる
  • コントロール信号をオーディオデータと同じケーブルで伝送できる
  • 入出力を気にせずネットワークに接続、拡張性が高い

Danteの特徴と魅力

これまでにも、オーディオネットワークにはCobraNet やEtherSound などの規格がありましたが、近年ではDante という規格が注目されるようになりました。およそ10年前にAudinate 社(豪州)により開発された後、ヤマハをはじめとする国内メーカーが対応製品を取り扱うようになったことが、日本でも注目される要因の一つとして考えられます。
オーディオ信号とは別に同期信号を伝送しており、同一ネットワーク上に存在する機器ごとに完全に同期した複数音声の再生を可能にしています。また、非常に小さいレイテンシー(遅延)での伝送が可能なことも最大のメリットです。

Dante 対応機器をEthernet に接続すると、機器ごとにIP アドレスが設定さます。また機器自体の情報(機器名やCH 数、サンプリング周波数/ 量子化ビット数など)も同時に通知され、この情報は機器間の互換性を判断するために用いられます。
また、Dante はビット数やサンプリングレートをデバイス間で自由に設定ができるため、メーカー間の垣根も低く、混在するシステム構築がしやすいのも特徴の一つです。ただし、通信性能上、ギガビットイーサネットに準拠したスイッチングハブが必要となります。

また、Dante 対応機器の接続には通常、プライマリーとセカンダリーの2 種類のEthernetポートが存在します。

各ポートを分けて2 回線のネットワークを構築することで、プライマリーの回線に何らかの異常があって接続が切断されたとしても瞬時にセカンダリーの回線に切り替わり音声を途切らせずに拡声を続けることができます。

Danteのメリットと注意点

Danteの施工におけるメリット

  • 1本で多チャンネルと制御信号を伝送できるので配線が少なくてすむ
  • 配管数の減少、施工内容/ 時間のスリム化
  • 音声の流れを実機の配線で追いかける必要がなくソフトウェアを使い1か所から管理できる
  • 設定用PC はネットワーク上のLAN 端子があればどこからでもアクセスできる

施工の観点から見るとDanteを利用することのメリットがよく理解できますが、設計時等においては注意すべき点もあります。

例えば、仮にDante 対応のマイクが故障して、設定していない予備のDante 対応マイクを接続しても、以前と違うIP で認識されてしまうため、接続しただけではシステム上故障したマイクの代わりとして動作しません。予備機を使用する場合は、予備機単体をPCで設定したり、あらかじめ予備機が接続できるようにシステム側で入出力などの設定をしておく必要があります。
また、ネットワークケーブル1本で複数チャンネルを同時に送受信することができるオーディオネットワークシステムでは、図面(システム系統図)上で設計の意図が読みづらい場合があります。設計者はどの音声がどこに出力されるかなどの設定を明確に記録しておくことが必要です。

 

※参考文献
・ ヤマハ株式会社 PA 総合カタログ/ネットワークオーディオ入門
・ 株式会社オーディオテクニカ 設備用音響機器 総合カタログ

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