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パブリックビューイングと著作権法、申請方法は?

  • レポート/コラム

テレビで放送されている一般的なスポーツ中継では、カメラアングルを切り替えたり映像にエフェクトや合成を加えたりなど様々な表現がされており、また同時に収録も行われている前提から「映画の著作物」として保護されています。

 

著作権法2条3項(定義)

“「映画の著作物」には、映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を含むものとする。”

 

スポーツ中継は、著作物として扱われることがわかりました。次の条文(著作権法38条3項)を見ると「営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けない場合」もしくは「家庭用受信装置を用い」のいずれか条件が当てはまれば、自由に上映ができるという解釈ができます。

 

著作権法38条3項(営利を目的としない上演等)

“放送され、又は有線放送される著作物(放送される著作物が自動公衆送信される場合の当該著作物を含む。)は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けない場合には、受信装置を用いて公に伝達することができる。通常の家庭用受信装置を用いてする場合も、同様とする。”

 

しかし、実際には、たとえ非営利目的であっても一般家庭にあるようなテレビ以外で上映会をすることは勝手にできません。「影像を拡大する特別の装置を用い」て上映を行う権利は、放送事業者に「専有」されているからです。

 

第100条(テレビジョン放送の伝達権)

“放送事業者は、そのテレビジョン放送又はこれを受信して行なう有線放送を受信して、影像を拡大する特別の装置を用いてその放送を公に伝達する権利を専有する。”

 

「家庭用受信装置」や「影像を拡大する特別の装置」については、明確な線引きがされていませんが、

  • 家庭用受信装置
    市販されているテレビ
  • 影像を拡大する特別の装置
    プロジェクター、マルチディスプレイ、LEDビジョンなど

といった区分で考えるとよいでしょう。しかしながら、最近では4K8K放送も本格的に始まり、家庭向けのテレビも大型化の流れがあります。例えば80インチ前後のサイズのテレビになってくると「家庭用受信装置」でありつつも「影像を拡大する特別の装置」でもあるという両方の解釈ができるかもしれません。いずれにしても、プロジェクターを用意して大きなスクリーンで観戦をする場合は、スポーツバーでの上映はもちろん、参加費無料のイベントを行う場合であっても、放送事業者の許諾が必要になると考えられますので注意しましょう。

 

※参考文献

  • 公益社団法人著作権情報センター 著作隣接権者とは?(2019年1月22日現在)
    http://www.cric.or.jp/qa/hajime/hajime4.html
  • 國安耕太(2014)『スポーツ中継映像にまつわる著作権法の規律と放送権』⽇本弁理⼠会

ワールドカップとオリンピック

昨年開催された「2018 FIFAワールドカップ ロシア」のPVについては、電通スポーツパートナーズが運営するWebサイト(パブリックビューイング.jp)に申請方法やライセンス料などの具体的な情報が掲載されていました。

所定の実施申請書にて事務局へ申請、その上でNHKの放送を使用する場合は「放送同時公開申込書」もNHKに提出します(家庭用受信装置を使用する場合は提出不要)。申請後に内容に応じて、事務局からライセンス料に対する請求書が発行される流れです。また、大会終了後には実施報告書の提出も必要となります。

注意しなければいけない点として、一般的なテレビ(家庭用受信装置)を使う場合も、営利目的もしくは参加料金を払うような上映においては、書類審査の上、ライセンス料が発生する場合もあるという点です。
ライセンス料については、会場ごとの収容人数により変わり500人未満で20万円~2万人以上で365万円(税別)となっていますが、映画館のように複数スクリーンがある会場では、FIFAの承認後に金額が決まるようです。

出典元:パブリックビューイング.jp『申請・許諾フロー』(2019年1月22日現在)
http://publicviewing.jp/shop/2018worldcup/

オリンピックの中継についても「影像を拡大する特別の装置」にてPV等、上映会を行う場合は、著作隣接権者にあたる放送事業者への許諾が必要となる前提はかわりません。(オリンピックは、NHKと民放連の共同機構であるジャパンコンソシーアムが放送事業者にあたります)

東京オリンピックのPVについては、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が、自治体向けの案内資料を配布していますが、一般向けのガイドラインについては、今年の夏頃に配布される見込みのようですので、その内容が確認できてから詳細については、追記できればと思います。

 

※追記(2019年6月11日)
オリンピック・パラリンピックのパブリックビューイングは、下記の3つの形式があります。
(1)組織委員会が主体で開催する「東京2020ライブサイト」
(2)地方自治体が主体となり地域ごとに開催する「コミュニティライブサイト」
(3)教育機関や自治会等が個別に主催する「パブリックビューイング」
コミュニティライブサイトについては2019年6月28日まで申請受付中です。

まとめ

  • 一般家庭にあるようなテレビを使用する場合は、原則、上映可能。
    ただし、営利目的(店舗集客など)や有料イベントの場合は、申請、審査が必要となるケースがある。
  • プロジェクターやLEDビジョンなど大型スクリーンで上映する場合は、非営利目的やイベント内容に関わらず放送事業者への許諾が必要。(個人、家庭内での利用を除き)

パブリックビューイングも盛り上がって楽しいかもしれませんが、一生に一度かもしれない56年ぶりの東京オリンピック。是非ともチケットを入手して競技場で直接観戦してみたいですね。

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