2015年6月、当社は、映像制作のプロフェッショナルであるPUREMEMORIES MDと、プロジェクションマッピング協会とチームを組み、大阪市内に大正からある迎賓の場《太閤園》へプロジェクションマッピング設備を導入するというお仕事に携わりました。
日本伝統の築山式回遊庭園を有する太閤園にプロジェクションマッピングを導入することで、「現代の新しい感性を加え、日本の美と華やかさを併せ持った現代の空間を生み、より幅広い世代の方に太閤園のおもてなしを感じて頂きたい」といった思いから今回のプロジェクトは誕生しました。
本プロジェクトのポイント
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大阪市内に大正からある迎賓の場「太閤園」へプロジェクションマッピング設備を導入
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日本の美と華やかさを併せ持った幻想的な世界へ導く
アプローチ
新しいコンセプトと空間
1Fの《庵》、2Fの《楼》両室共にマッピングを表示するのは専用のスクリーン等ではなく、室内の壁面です。そこへクリエータによって緻密に計算、調整を施された映像を投映することで、まるで没入型のバーチャル空間に飛び込んだ様な幻想的な世界へ導かれます。新郎新婦二人の姿を織り込んだコンテンツも投映可能となっており、ゲスト、ホスト共により心に残る映像演出を提供しています。
さて、このプロジェクションマッピングという概念ですが実は歴史は古く、一説には1960年代からあったと言われています。当時と今では全く方式は異なりますが『物体に対してのライティングによる演出』という意味では、確かにクラシカルな表現技法と言えるでしょう。照明による演出等は、それこそ中世期以前から存在します。ただ、そこに現代的なエッセンスである3D映像や、色彩豊かな動画コンテンツ、そして安定稼働する高性能なプロジェクタという存在が加わることで、先進的な現代アートへと昇華しています。
建築物を利用した芸術では、1955年にドイツで行われたクリスト&ジャンヌ=クロードによる『梱包されたライヒスターク』が印象的です。歴史の深い建築物を布で梱包するという行為に対し、社会的影響もさることながら建物への影響という面からも論争を巻き起こしました。製作背景を含めて見る者を圧倒する、そんな力強い作品です。
プロジェクションマッピングでは、クリストの作品の様な巨額な費用を使わずとも建物への影響を最小限に抑えた上で、歴史的な建築物や空間に対しての演出が可能となります。近年の日本では東京駅や大阪城等が記憶に新しいですね。現在はまだエンターテインメントの側面が強いマッピング演出が主流ですが、今後はARと連携した拡張&仮想現実空間の実現や、社会的な感性を含んだアートの表現技法として更なる広がりを見せることが予想できます。そんな新しいAVシステムの実現に対して、単なる経済活動だけに囚われることなく、歴史を創るコーディネータとなれる様、一層の情報発信を心掛けていきたいものです。